宇多田ヒカル『あなた』
平井 堅『ノンフィクション』
Bacon
『恋してるベートーベン』
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京都鴨川を舞台にするMVは3割増で好き。冒頭から走りまくって歌う女性が個性的で、この人がボーカルなのかと思ったが、このバンドのボーカルは男だし、MV中でギター弾いている人。じゃあ昨今流行りのモデルさんをフィーチャーしたMVなのかと思うが、やはりそんな雰囲気ではないし。正解は花柄ランタンのぷきさん。また個性的な人を持ってきたなあ、関西のバンドネットワークはユニークだなあなどと思っていたら、このBaconは関西のバンドだけれどもかつては全国的に活動していた、結成18年目のベテランバンドだった。HPのプロフィールを見ると17年分の活動歴にメンバーの想いをプラスしたメチャ長い文章が載っていて、ああ、このこだわり加減が多くの普通のリスナーを遠ざけるんだろうなあと思いつつ、個人的には結構好き。ビジネス的なセオリーをすべて踏襲するとだいたい同じものになっていくので個性なんて消えてなくなるけど、こうした好き勝手な表現にこそ個性は宿る訳で。まあその結果熱狂的なファンを多数獲得できるのか誰もが離れていくのかは別の話ですけど。その長いプロフィールを丹念に眺めていると、バンドが初期の勢いで調子づいて盛上がっていくんだけれども様々な要因で速度が落ちていくという比較的王道な経歴が書かれていて。普通はそこで自然消滅していくんだけれども、稀にそこからまた集まって活動を始めちゃうというある意味無駄なストーリーが書いてあって無駄にワクワクします。そういう、諦めの悪い活動の中から不死鳥の様に再び盛上がって、初期の勢いだけのプチ成功を遥かに上回る大成功に至るようなバンドがそろそろ出てこないかなあと、それが音源セールス的にも萎みつつある音楽業界に新たな光を照らすような出来事になっていくんじゃないかなあと、そんな希望を持っているし、そんなことを感じさせる1曲でもあるかなあとか、1年の始めに思ったりします。曲の後ろにうっすらと重ねられているピコピコ的なシンセサウンドが、「それ要るか?」と思いつつも個人的なツボでした。
(2018.1.1)
(レビュアー:大島栄二)
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