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スカート
『視界良好』

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 日本語詩の持つ寂寥感や、侘び寂びがなかなか輸出されないように、切なさも同じようで、というのは故郷(に近いどこか)に対しての視座や思慮がこの数年であちこちで変わったと証左なのだろうか。

 小さな町の診療所はごった返し、都市の人気のクリニックはまるで、洗練化されてしまって、ふと驚きもする。私的に、現在の大文字の日本の磁場ではEDMの波も通り過ぎ、ポップ・ミュージックがマッシュアップされて流れている。ショッピング分の時差にAKB48、EXILE、Mr.Children、Spitz、米津玄師など尽きずに後景に、同じく、メガモールの今どきの好況も華を添える。

 そんな中に、スカートのメジャーからによるファースト・アルバム『20/20』がいい。FMでの流れ方から細部までグッとくる。曲によるものの、トッド・ラングレンの初中期の端々に感じさせる五感を刺激させるメロディ、詩、歌が響いてくるようなものがコンビニや界隈で頬を撫でるとしんみりと慕情を誘う。また、思わぬ雑多な場で、日本のオルタナティヴな音楽への嗅覚と表象を為された際にスティーリー・ダン、ムーン・ライダーズ、キリンジなども含めて、ポスト・パンクまでの意匠を踏まえたこの曲はこんな不明瞭で厄介な世で、多様な個々でリズムを感じてみてもいいと思ったりする。

 ネオアコが、旧存のフォルムを解体、相対化したときからすると、このリフにはザ・キュアーのあの陰翳。更には、ジョニー・マーの影が軋み、透けるようにポップ・ソングとして新しく届く切なさがあると思う。季節や時事の変化に敏感でもどこかオーセンティックな―

 大瀧イズムに殉教しつつもの、MV含めての出来上がっている異境性。ルーツの自覚があるどこかへ向かう視線と知性はどうしても鋭くなる。「いい曲」だけで終わらずに、かのスピッツのMステでの存在感で再発見されたり、懐深く、邪気も持ち合わせながら、ルーツ・ミュージックや、アナログ・レコードに、時おりのCDに帰りながら部屋の中で観直す音楽は、今でこそ変わるように彼の佇まいは大きくなると思う。

 マニアックとは、字義のそうではなく。ただ、発見されない限り、埋もれたまま、のニュアンスが多く、本当に惜しいことがある。

 だからこそ、遠回りばかりな人たちへと。

    遠回りばかりずっとしてたけど 立ち止まることにも 
    意味はあったんだ
         (「視界良好」)
(2017.11.14) (レビュアー:松浦 達(まつうら さとる))
 


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