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フラワーカンパニーズ
『ハイエース』

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 フラカンはいまもハイエースに乗っているのだろうか。

 バンドがツアーで全国のライブハウスを回るとき、新幹線で移動なんていうのはごく稀なケースで、大抵は交通費をできるだけ切り詰めた手段を考える。初ツアーではメンバーの誰かが持っている普通の乗用車で行くし、ソロシンガーなら深夜の高速バス&ネットカフェというのが最近の定番だ。しかしバンドで、理想の音を出したいからとアンプも持参したい場合、選択肢はハイエース1択になる。ワゴン車は各社からいろいろ出てるけれど、ハイエースの荷物積載能力は群を抜いている。そして居住性もいい。車中泊で宿泊費を浮かせる。色々考えるとやはりハイエース1択になるし、実際ハイエースで全国を回っているバンドは今も多い。だが、多くは音楽によるサクセスストーリーを夢見ているわけで、ハイエースで全国のライブハウス巡りはやがて全国のホールにイベンターから呼ばれる存在となり、メンバーは新幹線で移動しても現場には自分たちの機材が、スタッフの手によって機材車で運ばれている、そういうのに早々に移行したいと思うのが普通だろう。では誰もがそうなれるのかというとそうでもなく、数年でなれない場合、辞めてしまうかハイエース生活を続けるかのどちらかしかなくなる。フラカンは、どうなんだろうか。「続けることだけが目標になってる」「燃えカスになってくすぶり続けてゆく」と歌う。さらにテンポが一気に上がって「いつまでこんなの続けられんだよ」「一発逆転〜ガキの寝言か」「誰かのためとかどうでもいいわ!」と畳み掛けていく。すごい。音楽への、いや、一度始めた人生への、執念というか開き直りがすごい。ステージでスポットを浴びて歓声に包まれるのは華やかな一部分に過ぎず、その1時間ほどの華やかさを支えるのは地味な移動と機材の積み降ろしだったりする。それを、続けるのか、辞めてしまうのか。まるで人生そのものだなと思う。ひとつの仕事が死ぬまで順調にいくとは限らず、若い頃に花形だった業種が数十年で斜陽になることは多い。自分が賭けた職業で、最大限頑張っても先行きが見えているという場合に、それでも続けていくには、必要なのは意地しかないのかもしれない。

 フラカンは今でもハイエースで全国を回っているのだろうか。その真偽はともかく、今この瞬間を意地で生きているすべての人への力強いエールのような曲だ、これは。
(2017.9.16) (レビュアー:大島栄二)
 


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