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MOLE HiLL
『モノゴコロ』

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 ボーカルとよく似た子供が登場するMVで曲のタイトルがモノゴコロ。斜に構えて評するなら割とベタ。だが、そんな斜に構えたシニカルな評が哀れに思えてくるほど、彼らはストレートに真正面から前向きなメッセージをズドンとやってくれている。登場する子供が周囲のあらゆるものに興味津々で、笑顔で手を伸ばし、触り、不器用にこの世界を知ろうとする。タコみたいな遊具に飛び乗ろうとする動きがぎこちない。そこはもっとこうしたら上手く飛び乗れるよとじれったい気持ちになる。だが、誰かに教えられたテクニックよりも、何度も失敗して身に付けていく不器用さの方が、きっと何倍も楽しいんだろうなあと感じたりする。そういう映像を見ながらも、MOLE HiLLの歌が、演奏が、いつのまにか聴いているこちらの気持ちを高めていることに気付く。良い曲だし、良い声だが、じゃあアコギの弾き語りで同じ気持ちの高まりがあるのかというときっとそうじゃないはずだ。演奏のひとつひとつが、楽器のひとつひとつのフレーズが、この高まりを後押ししているのが判る。それは奇を衒って目立とうという想いがほとんど感じられず、メンバーひとりひとりがバンドサウンド全体の一部を担っているという意識がこのサウンドを作り上げている印象なのだ。こういうバンドは強い。表面的な何かで目立って急速に知名度を上げるというのは難しいかもしれないが、一度知って好きになったファンはなかなか彼らから立ち去ろうとはしない。なかなか集客が増えないという悩みに苛まれることもあるかもしれないが、こういうバンドにこそ、結成当初の気持ちを忘れることなく、ずっと頑張っていって欲しいなあと思うのだ。
(2017.9.5) (レビュアー:大島栄二)
 


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