タイトルに惹かれる。青春時代は昨日。直訳するとそういうことでいいのだろうか。青春時代なんて記憶の彼方という年齢になれば「今でも青春ですよ」みたいな、永遠の18歳みたいな厚かましいことを口にできるが、「ああ、青春が今終わった」みたいな瞬間というものはあるし、その瞬間には「今も青春」なんて口にするのは欺瞞でしかない。それを欺瞞と感じられるのが実はまだ青春を引きずっていることの証なのだが、その初々しい青春卒業時にだけ許される「youth is yesterday」というタイトルは、とてもいい、それだけでなんかグッとくる。青春なんてたいしてスゴいこともできないし、せいぜい友だちと徹夜でバカなこと、本当に無駄でしかないことをやり続けるくらいの時代なのだが、終わってみるとそれが何より貴重だということに気付く。それが、「youth is yesterday」という、切ない後悔にも似た感情なのだろう。MVの映像はバンドメンバーだと思われる3人が電車で移動し、特に目的も無い、観光地でもない場所をうろつくシーンが延々と続く。ああ、それが青春だよなあと思う。演奏は淡々としてて、男女のボーカルが交互に歌って、それも切ない。青春時代が終わったことを「世界の終わり」と表現し、その世界の終わりの意味を「平穏」と歌う。平穏なのに世界の終わり。この感性は若い頃のある時期にだけ存在する、貴重なものなのだよなあとあらためて感じる。この時代の「何も無いけれども残りの人生だけはたっぷりとある」という要素が無ければ、青春とその終わりなどをリアルに感じることは不可能なのだと、あらためて思わされる。