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Richard Ashcroft
『Bitter Sweet Symphony』

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 リアルタイムで体験したかった、この時代を生きたかったという感慨はどんなときでも尽きず、たしかにビートルズの武道館を年配の方から実体験を聞くのは愉しいし、自身がリアルタイムで体験して今は諸事情でもう感応できないこともあるが、生きている間に多少、無理やりにでもスケジュールを遣り繰りし、導線を乗り継いで向かった方がいい場合もある、あくまで「場合」で。解散したバンドはどうにも神格化されてしまうところがあるが、ザ・ヴァーヴも一時期はそうだった。例えば、1997年の『アーバン・ヒムス』は荘厳な作品で、今やすでにクラシックの様相もあるが、音楽雑誌でザ・ヴァーヴ来日署名企画を行なうなどあったものの、絶頂期には(一時)解散して観られなかった。その後、ボーカルのリチャード・アシュクロフトがファースト・ソロ作品をリリースし、00年に初来日するというので、何かとタイトだったのだが友人の「迷ったら行った方がいいよ。」との声に背中を押されて、大阪のIMPホールへ行った。正直、フルハウスと言い難く、当日券でも気楽に入る事ができた。ファースト・ソロ曲とザ・ヴァーヴ時代の曲を淡々と演奏してゆき、アンコールではザ・ヴァーヴの代表曲のひとつ「ビタースウィート・シンフォニー」をやって素っ気なく去っていって、1時間半もしなかったと思う。その後、たまたま床に落ちていたセットリストを観たら、かなり端折られていて、でも、ライヴはときには元を取ろうとするものでもなく、そういう光景も或る種の醍醐味だったりする。暢気で牧歌的な時代だったと思わないし、チケット代は当時でも高かったし、あれこれ不満はありもしたが、目の前の観客が楽しそうに身体を揺らしながら大声で歌っているのは悪くなかった。それでいい場合もあるのだと思う。その後は、ザ・ヴァーヴ自体は紆余曲折とともにバンドとして観ることも可能になったときがあったり、リチャードは間隔が空きながら、ソロ作品を重ねたりしているが、昨年のこのライヴでの彼の姿がなにより雄弁な気がするのであえて。「今」という瞬間はすぐに褪せてしまうゆえに環状に捻じれる日常のなかで甘苦いシンフォニーを感じられるような音楽とともに穏やかな春に。'Cause it's a bittersweet symphony, this life.
(2017.3.20) (レビュアー:松浦 達(まつうら さとる))
 


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