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『インスタントミュージック』
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インスタントなものの簡易さは感じる。ビットコイン、電子マネーで繋がってゆく社会、ポイント還元で決裁できるサービス。レンタルにはもはや、ヒトが関わるようになり、人間の「間」にはAIや融通のきくアプリが介入してゆく。モールス信号を打つように、ジャーゴンの中に閉じこもるように、誰も知らないあなたは、誰かが知っている誰かと会える時代に。これは98年11月の曲だが、「インスタントミュージック」をやんわり今の耳で聴くと、ビッグ・データ、クラウド化の昨今の急速な流れを想いもできるから不思議だ。肥満化したファイルをずっと持っている人も多いのかもしれず、同時に、来年にはそのファイルは削除されていたりする瀬に。マイノリティ、カウンターであることは難しい。中央集権型の“何か”が昔のそれではなく、堅固でなく、どちらかというと、緩すぎて越えられない壁や階層が見えすぎるあまりに、個々別々に違う形でフラストレーションがたまる。政治経済問題、労働問題、教育問題。不世出のバンドにして、コンスタントに活動を続ける日本のロック・バンドたる彼らは、有名なアニメーションに歌が使われたのもあり世界的に広がりながら、殆どの作詞・作曲を担い、印象的なボーカルの山中さわお氏の真っ当な世の中への物言いがオーバーアンプを通じて届いてきたという意味を考えれば、初期のブルーアイド・ソウルやネオアコ的なサウンドを鳴らし、一気にグランジに、ラウドに振り切れた頃からの現在までの壮絶な軌跡はロックへの命を賭した覚悟が見える。変化のないようなリフで淡々と進むこの曲の中で、それでも、歌われる歌詞はシリアスな風刺、示唆的で、この2016年にも無論、通じる。また、ミスターチルドレン、ストレイテナー、エルレガーデン、バンプ・オブ・チキンなどの多くのバンドの深いリスペストにも背中を押されて、彼らはいまだ日よらず、インスタントなものへの反抗的気概を持ち続けている。そして、インスタントミュージックに子供達が溺れないように、と。
インスタントミュージック
世界中に溢れ 子供達は溺れてる
ダイエットミュージック
ほら夢中になって
くたばっちまえよ
(「インスタントミュージック」)
(2016.11.14)
(レビュアー:松浦 達(まつうら さとる))
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