Split end『ロストシー』
RCサクセション『ヒッピーに捧ぐ』
トクマルシューゴ
『Lift』
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「隙がない」とか「唸る」とかいうのではなく、「これが今の温度が醸す正解のひとつだ」という映像総合美術に出会うときがある。インスタレーションとして現代を照らしているのみならず、奇特に留まらない。振り返るに、ゴダールの『ワン・プラス・ワン』、エイフェックス・ツイン『ウィンドウリッカー』など不穏な要素の断片が鮮やかに明るみを照らす。
このトクマル・シューゴの『Lift』も音楽面だけではなく、そう言うことに異論はない。
あまたのハッシュタグの中に、Age of Copies、Asymmetry、Land...などを入れてこのMVがバラバラに、文脈が断絶したまま、拡散されても構わないが、そこを遮断し、分散化させるよう強烈に漫画家の楳図かずおの刻印が舞い踊るのがまた「らしい」。シンギュラリティ、IoTの未来を嗤いながら、ポップな昂揚のなかに深いカンタベリーの森で迷い、ブルックリンの途中で白昼夢を見るようなサイケでキュートな色彩とトクマルのサウンド・センスが都市を更新し、ロンドする。
ブロックチェーン越しに視えたぼんやりした都市(まち)を、まるで砂上のカーニバルと見越すみたく、揺らめき方とリアリティと仮想現実の感覚差は「こんなものだろうか」とフリーキーに投げ捨てんばかりに上へ、上とバベルの塔へと向かう。“それ”が蜘蛛の糸なのかどうなのかは分からないが、以前と解釈が多層化してきたクール・ジャパンという記号論の極北の先に、世界地図がまだそこまで書き替えられない希望的な何かを寄せられるならば、こういうベタな青みなのだろうとも思う。PPAPじゃないけど、ペンは剣より強し、で。
先の、先の、先まで。希望の、希望の、宛先不明先の希望じゃない何かまで。
もはや、持ち上がった未来は怯え、怖いものではない。そこに君が含まれていなくても。
(2016.10.25)
(レビュアー:松浦 達(まつうら さとる))
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