菊地紗矢『四半世紀の孤独』
桑田佳祐『月』
Dinner Set
『Coin Laundry 2』
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学生時代にコインランドリーを使っていた頃は、待ち時間をどう使おうかということが大きな課題だった。洗濯に30分程度。乾燥に20分から30分。使っていたコインランドリーは銭湯併設だったし、洗濯の時間は決まっているからその間は風呂に入る。それは決まっている。問題は乾燥だ。10分100円なのでまずは20分だけ乾燥させてみる。だがその時の洗濯物の量、乾きやすさ乾きにくさによって20分で乾燥完了する時と、まだ湿っている時とがある。学生が銭湯に行くのはだいたい閉店間際なので、風呂から上がって乾燥機を回し始めてちょっとコンビニに行ってたりすると閉まっちゃうことがある。だからその場を離れられない。20分待つ。で、乾燥具合をチェックする。まだダメだ。もう100円。また10分待つ。この待ち時間の長いこと。10分は10分だから変わらないはずなのに、ああいう時は時間が過ぎるのがとにかく遅い。追加で100円を入れることのガッカリ感と、あと10分待たなければいけないことのガッカリ感と、どちらが大きかったんだろうか。今ならスマホでいろいろ見てたらあっという間に過ぎちゃうんだろうけれども。それによく考えたら、節約したけりゃ濡れたまま持ちかえってアパートで干せばいいだけなのに。なんでそんなことを考えられなかったんだろうか。学生なんてその程度なんだろう。アホだった。このビデオではコインランドリーで洗い上がり・乾燥終わりを待つ女性が小さな空間で無為に待つ時間が描かれている。音楽を聴いている。刺繍をしている。ステキな時間の使い方だ。誰もいない公の空間。離れることの出来ない暫しの時間。乾燥機がぐるぐる回っているのを眺めている。バカだなあ。そんなの眺めたって何にもならないのに。でも、よく考えたら自分もあれを眺めていた。同じ回転が続く中で、洗濯物が見せる表情は回転するたびに違っている。というか、回っているという事実が、とても興味深かった。それはまるで日々繰り返される暮らしのように。朝起きてメシ食って仕事や学校に行って帰ってきて寝る。それだけなのに毎日違う。隣の乾燥機では知らない誰かの洋服が同じサイクルで回っている。行われていることは同じなのに、じゃあ誰かの服と交換できるのかというと、それは絶対に出来ない。交換不可能な自分の人生そのものがグルグルと回っているような気がする。今はもう行かなくなったけれど、コインランドリーって、つまらないけれどもステキな空間だったような気がする。曲のタイトルが『Coin Laundry 2』というのは何故なのかというと、このDinner Setというバンドは他に『
Coin Laundry
』という曲も作っているからです。なぜコインランドリーにそんなにこだわるんだろうということを思い巡らせながら、このゆったりとした気持ちいい曲を聴くのも、音楽の楽しみ方のひとつなんじゃないかなあと、そう思います。
(2016.2.19)
(レビュアー:大島栄二)
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