一十三十一『渚にて』
METAFIVE『Don't Move』
中村ピアノ
『灯台』
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ラブソングだと思う。多分。ええ、ものすごいラブソングだと思う。ヘビーでヘビーでいたたまれない。この曲を聴きながら、彼女のライブに行っている自分を考えてみた。淡々と、リスナーにそれなりにフレンドリーなMCを披露し、次のライブにも是非来てくださいねと言って、この曲が流れてくる。生の彼女がこれを歌う。ヘビーだ。直視できない。ちゃんと聴いていれば、直視できなくなる。一般的に平和で過不足ない暮らしを送っている人ばかりかというとそんなこともなく、この歌は具体的な描写は無いものの、断片的な、しかも毒のない言葉を重ねることで、具体的なシーンが積み上がって明確な絵として迫ってくる。底なしのやるせない心ってなんだろうか。想像できないことで、ヘビーさはいや増しになる。各人が持つ闇は人それぞれ違っていて、ピッタリと一致することなどなくとも、たった一部重なることで想像が膨らむ。平静に装って生きている自分。楽しげに暮らしている周囲の人。マンションのドアを閉めてしまえばそこで何が起こっているかなどわかるはずもなく、強制的な何かでドアをこじ開けて部屋の中に侵入したとしても、住人の心の中まで覗くことは不可能。闇を隠して生きている人がほとんどの中で、ごく稀に覗かせてくれる表現。それがアートなのだと思う。絵画ならば美術館の壁にかけられたものを見るだけで良いが、ライブで、作者が笑顔で歌う闇。そういうアート体験は、限られたくらい空間の中でしか起こらない。淡々としたピアノと、笑顔から鳴る歌の前で、観客席の自分は一体何を想うのだろうか。それはコンピューターの画面の前で想像するものを遥かに超えた何かになるに違いない。
(※2018.1.31時点で動画が削除されているのを確認しました。レビュー文面のみ残しておきます)
(2015.11.30)
(レビュアー:大島栄二)
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