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フィッシュライフ
『三億円』

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 勢いのあるバンドというのがいくつかあって、フィッシュライフもそういうバンドのひとつといえるだろう。昔だったらもうメジャーデビューしててもおかしくなかったりするけれども、今はもう昔ではないのでそんなこと言っても意味が無いし、メジャーじゃなくてもある程度の人気を集めることができて、CDショップの試聴機に入らなくてもMTVでビデオ流れなくてもラジオでパワープレイされなくても、自分たちの活動を伝えることができて、人気も獲得できるっていうのはやっぱり昔じゃなくて今が良いよねっていうところだ。そのバンドの曲のタイトルが三億円で、中年のオッサンにはどうしても三億円事件の印象が強くて、大金だよね、それがあると何でも出来そうだよねという金額の象徴でもあるわけだけれども、今の若い人にとって三億円事件なんて記憶の外にあるだろうし、スポーツ選手で年棒三億だとそんなにスタープレイヤーという印象もない時代に、「三億あったら買えるか」というメッセージはどう映るのだろうとか思ったりする。もちろん「金では買えない何かというのもあるのだよ」という含意なのだとは思うし「三十億あったら買えるか」では譜割も難しくなるし、じゃあ「十億あったら」や「百億あったら」というのではどうだとかも思うが、それは作詞者が選んだ言葉として「三億」というのがあるわけで、どうしても異論があるなら自分でその歌作れよという話でしょう。ええ、すみません。まあ野球選手の年棒三億とサッカー選手の年棒三億とバトミントン選手の年棒三億では意味合いがまったく違うわけで、そういう意味では現代のミュージシャンの年棒三億というものが持つ意味を考えれば、やはりそれは夢の数字と言わざるをえないということかもしれなくて、ちょっと切ない。
(2015.10.9) (レビュアー:大島栄二)
 


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