大江千里『REAL』
group_inou『EYE』
ヒナタミユ
『普通の毎日』
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高音競争をするような一部のそしてかなり大部分のボーカルの人たちの声が薄っぺらいなあと思うのは、こういう声の歌の人に出会うときです。この人の高音はかなり早い段階からファルセットのような感じがニュアンスとして混ざってきて、いや、ファルセットっていうのは裏声的な仮声のことだから通常の声とは切り替わった後の声のことだよなあと思ってついついググって確かめてみたりもするのだけれど正解は得られず。でもこの人の声が高音に移るにつれて明らかになる声の震え方は、裏声なのか表声なのかもよくわからず、わからなかったからといってもそんなことはそもそもどうでもよく、その震え方が心地よいのか心地よくないのかだけが大切なのだという観点からすれば、もうとっても心地良い。そこに気がついてからあらためて聴いてみると、この人のこの声の震えというのは低音域を歌う時にもちゃんとあって、だからどの音域を歌っていてもずっと心地良い。高音競争をしているボーカリストはその部分を強調したいからなのか、自分の持っている音域よりもちょっとだけ高いキーで歌ったりする。で、そこを特化することに心を砕く分、低音中音域の声がけっこう疎かになっていたりする。それは例えて言えば、CMなどでサビだけがカッコよくて1曲全部聴いてみるとサビ以外がダメダメだという曲だったことが判って残念な気分になるように、高音が素晴らしい人のダメな低音を聴かされたときのガッカリ感は大きい。その点でもこの人の歌は、特別高音を強調しようともしてなくて、すべての音域を大切に歌っているように聴こえるし、だからむしろちょっとキーを下げながら丁寧に歌っているのではないかとさえ思えてしまう。どうやらまだCDもこれからという感じの人のようで、そのわりにはしっかりとしたビデオで、これから出てくればいいのになと、遠くから遠くからひっそりと期待というか応援したいなと思うのです。
(2015.8.24)
(レビュアー:大島栄二)
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