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夜ハ短シ
『今日も生きるのだ』

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 ベースはリズム楽器である。それは基本中の基本で、だからほとんどのベースはボンボンボボボンボボボボンとコードの中で低音のフレーズをループする。もちろんそれは基本中の基本なので正しくて全く正しいことなのだが、時々そういう基本から逸脱するような演奏をするベースに出会うことがある。このバンドのベースはこの曲で最初そういう基本の演奏を見せていくのだが、そのフレーズが徐々にギターソロのような役割を担いはじめ、間奏では完全に主メロを弾くようになっていく。そこではボーカルが持っているアコギがコードをアルペジオで回していて、ギターとベースの通常の役割が逆転しているようで面白い。バンドのレコーディングでは1人のギタリストが何本も音を重ねて録音することも一般的で、だから3ピースバンドでもベースは低音フレーズを回すことに専念し、あらゆるフレーズをギターが担当するということも珍しいことではない。だがそれは所詮ライブでは再現できないサウンドでしかない。このバンドのこういうベースは、3人でもステージで豊かな表現を実現するための策ということなのかもしれない。夜ハ短シというバンド、かつてはメジャーで活動していたメンバーを中心に集まって結成し活動を続けているものの昨年ドラムが脱退。「夜」の期間はメンバーの意に反して長く続いている。個人的には「歳をとっても変わらずにいられるかな、いたいもんだな」という歌詞には異論があるものの、希望がその通りに実現するばかりではなく、むしろそんなことは少なくて、それでも「今日も自分を信じて生きる」しかないというメッセージには、完全に同意するし、頑張ってほしいし、僕も頑張ろうとちょっと思ったりもした。
(2015.8.13) (レビュアー:大島栄二)
 


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