宇多田ヒカル『Goodbye Happiness』
17歳とベルリンの壁『終日』
響心SoundsorChestrA
『玉虫色』
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歌は常にきれいに歌うべきというような小学校の理想がいかに薄っぺらいかというのは、こうして声も裏返り音程も外した歌のリアルさが証明してくれる。イントロ開け冒頭の一言から声が裏返る。裏返るということは非常事態のように普通は考えるが、最初から最後までずっと声が裏返りながら感情を激白するように歌うのを聴けば、裏返るのがむしろ表で、きれいに歌っている部分こそ裏なのではないかとさえ思えてくる。言ってみれば「裏寝込んでいる」的な印象になってくるのがとても興味深い。しかしよく考えてみれば普通の人からすればステージに上がる数十分間というのが異常事態なのであって、そんな状況できれいに歌うなんてことを期待するのがどうかしているようにも思えてくる。いや、みんなしてるんですけどね(僕にはできません)。この長い名前のバンドが歌うのは心をそのまま衒うことなしにぶつけるような印象の曲が多く、中でもこの曲が訴えるのは、日常の欺瞞を当然のこととして受け入れながら生きているのが恥ずかしくなるくらい、ストレートであたりまえの正直さだ。こういうことこそ裏返ることなくきれいに唱歌のように歌うべきなのだろうとも思うのだが、嘘にまみれて怯えている社会にあっては、声が裏返るように歌わなければ耳を留めてもらうことさえできないのかもしれない。
(2015.7.6)
(レビュアー:大島栄二)
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