00年代前後の彼らは一種、社会現象となりながらも、華麗に北海道のフェスで「Viva la revolution」で歓喜の旗が靡くさまに遭遇した身としては、ドラゴン・アッシュ、そして、フロントマンたる降谷建志氏のアクションには気になるものがあった。そこで、さり気なくも美しく、この「降谷建志」名義のソロ・プロジェクトが始まり、曲のみならず、初のソロ・アルバム、ライヴまで決まっているのには多少、ナイーヴに対峙せざるを得なかった。ただ、この「Stairway」、いわゆるソロ・アルバムにリードされるシングル曲で、オーストラリアでシューティングされたものなのだが、漂っているフィーリングがとても心地良く、たおやかな空気感含めてフィットするものがある。尖っていたり、牙を向く時期ばかりが正解とは限らないのは得てして多い。
過去には、彼はnidoやアナザー・ワークスなどでエレクトロニカ、IDMへの傾倒を示す作品に関わっており、敷衍して、美しいサティ、イーノにも負けないアンビエント的なソロ・ワークを作るかもしれないと思うところもあったのだが、聴いてのとおり、箱庭的な電子音楽の意匠は細部で凝らされながらも、ベースにあるロックのダイナミクスが折衷されたスマートに自由性の高いサウンド・ワーク、リリックが活かされたものになっている。MVで垣間見える彼も、過去のあらゆる聴き手やファン、そうじゃない人たちの想い入れの集積体として捉えられるならば、そのふわっとした「自然体」という在り様に訝しく、やわらかく構えてしまう人もいる可能性もあるが、ただ、彼は今回のソロ・ワークにあたって多方面で積極的に、ドラゴン・アッシュの自身としてより、あくまで「個」たる自身の表象行為の動機、理由に対してメディアを通じて語っている。