オレスカバンド『Walk』
hybrid leisureland『Exist Unreality』
The Sound's Pierrer
『自由に舞う鳥になりたい』
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速いスピード競争になりつつある現在のロックシーンとはいったい何なんだろうかと、BPMを上げていけばフロアが踊るというようなもっともらしい説明はもう何万回も聞いたような気がするがどうも納得出来ずにいた。そんなとき、この曲を聴く。曲を聴くとは歌詞も同時に味わうことで、それはただビートに任せて身体を踊らせるという行為とはまったく違った精神の何かである。そしてバンドマンが曲を作るという行為は、何も考えずに楽器と向き合うようなものでもなくて、結局はその時点での精神の在り様をどう形にすればいいのかという自問自答という精神活動でもある。だとすればこの時代の曲がどんどん速くなるというのは即ち同時代の精神の追い込まれようをそのまま反映したものなのではないかという、ひとつの気づきに到達する。未来はないのだよと若者は言い聞かされているようでもあって、しかしながら完全な絶望の後には筋肉の弛緩のような無力感が起こるはずで、だとしたら、この果て無き速度競争のような状況が表しているのは、まだまだもがけばなんとかなるのではないかという希望を見ている、そんな追い込まれのような何かではないのかという気がする。描く希望が鳥のように自由に空を飛びたいという無理な変身願望であったとしても、速度を上げて頑張れと願いたい。数多の人が鳥になど成れず地上に這いつくばることになったとしても、その中の万にひとりでも空を飛べるのではないかと100%思い込むことこそが、希望というものの正体でもあり、その無謀が不可能を可能に変えてきたのが人類の歴史そのものなのだから。
(2015.3.30)
(レビュアー:大島栄二)
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