Peace『Lost on Me』 Next Plus Songレトロ本舗『買いすぎブギ』

リーガルリリー
『高速道路』
　弾き語りの歌声が夜の光景に染み込んでいく。映像の舞台は新宿だ。新宿という場所は大きな道路が６つの方向から集結していて、それらの方向にある先がすべて違っている。それだけでなく、新宿に到達した箇所の持つ雰囲気がすべて違っているという、そんな不思議な街だ。それは東京のどの街とも違った不思議な雰囲気であり、都市を求めてやってきたすべての田舎者が、自分に最適な新宿を選択出来るように作られているのではないかと穿ってみたくなる、そんな魔力のような気がする。それはまるで誘蛾灯と吸い寄せられる羽虫のような関係性でもある。そういうとそこに暮らす人間を羽虫のように罵倒しているかのように思われるかもしれないがそれは誤解だ。むしろあの街が持っている暖かさというものを十分に理解しているつもり。本当の不夜城が街単位で存在するというのは、年齢層も含めた単機能な街では不可能なことであり、そういった意味でもここにしか存在しない暖かさ、誰をも拒まない優しさが新宿にはある。それをもっとも実感するには、高速バスを利用するといい。高速バスで移動する時、深夜の集合と早朝の到着はほとんど不可避で、集合する時にも手持ち無沙汰であれば、到着しても街が動き出すまでかなり手持ち無沙汰になってしまう。だが、新宿だけはそんなことなく、24時間態勢で向かえてくれる。それが優しいのか厳しいのかはまた議論の余地もあるだろうが、高速道路というタイトルの歌を新宿で歌う切ないビデオに、かつての住人としては涙流さずにはいられない感慨があったのである。
（※2018.1.31時点で動画が削除されているのを確認しました。レビュー文面のみ残しておきます）
(2015.3.26) (レビュアー：大島栄二)
 

   
         
 


 
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