swim me『home』 Next Plus SongKANADe『Happy & Sad』

さねよしいさ子
『風や空のことばかり』

 今でこそ不思議系というのはある種ジャンルとして確立しているかのようだが、彼女が登場した1990年にはやはりかなりの違和感を覚えたものだ。舌が短いのか、それとも意図的に鼻に空気を通しているのか、理由はともかく独特の歌声と不必要にファルセットを加えてくる歌唱法がまず特徴で、それに輪をかけるように歌詞が個性的。で、近年の不思議系の人たちはそれをキャラクターとして演じているのが透けて見えるのだけれども、さねよしいさ子の場合はおそらく真面目にこれをやっていた。そういう点で、彼女より先に不思議系の重鎮だった戸川純とも一線を画している。それは今でこそ若者の中に普通に存在する、正直故の苦悩の先駆けだったのかもしれない。その苦悩がこんな形で作品になる過程が、そして結果が、当時の若者である僕に響いたのだろう。そんな彼女は今NHKの子供番組で流れている曲で作詞をしていたりする。ああ、こういう形で音楽活動を継続できてて良かったなと、誰目線か判らないような感慨を、僕は家族にも言うことなく心の中だけで思ったりしている。
(2015.1.31) (レビュアー:大島栄二)
 


   
         
 


 
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