Kiyoshiro & Chabo『君が僕を知ってる』 Next Plus Songひめキュンフルーツ缶『パラダイム』

秦 基博
『ひまわりの約束』

 今年の夏に封切られた『STAND BY ME ドラえもん』は当初の予測や周囲の反応より、ロングランを続け、多大な評価を得続け、海外での上映も決まっている。予告編の時点で明らかになっていた3DCG作品かつ、『ドラえもん』の中でも秀逸なエピソードを重ね合わせた形式というチャレンジでもありながら、既に、アニメーションとしては、来春にオリジナル長編の『のび太の宇宙英雄記(スーパーヒーローズ)』という新作もアナウンスされていた中での成功。 近年の『ドラえもん』の映画は子供とともに観に行っても、親子連れでも大人が泣いているシーンが多かった。かくいう自身も、2011年の『新・のび太と鉄人兵団~はばたけ 天使たち~』のリルルのシーンとBUMP OF CHICKENの「友達の唄」のエンディング、2013年の『ドラえもん のび太の秘密道具博物館』の、ドラえもんの“鈴”を介したのび太と父を巡る一瞬のリンクには心の琴線が震わされた。最近の、ドラえもんの映画は、冗長性は排され、テンポがいい。そして、深く感傷的な挿話もタイトに結う。ゆえに、その残像が最後に活きてくる。『STAND BY ME ドラえもん』では、過去の厳選されたエピソードからのび太が一人でジャイアンと闘うシーンから、有名な静香ちゃんの結婚前夜という場面を含めながらも、“ドラえもん”という永劫的に近づけない現象体を通じて、のび太という小学生を通じた普遍的な痛みと悲しみ、とほんのわずかな先の未来へ向けたストラグルを描こうとする。 「ドラえもんが実際にいる世界」は幸せなのか、飛躍して、手塚治虫が夢想した未来は、今はどうなのか、いくつもの導線がいる。でも、主題歌を担った実力派の秦基博の「ひまわりの約束」がこの映画を一気に、引っ張り上げたと思う。“アナ雪”の年と言われるだろうが、子供たちは『妖怪ウォッチ』、『ワンピース』も『コナン』も『進撃の巨人』も大事だと思いつつ、ドラえもんと、彼の歌に確実に心が動かされていたと思う。永劫や普遍性ではない、こういうマジックが起きるのが面白いという意味で、秦基博というSSWが切々と歌う、か細い約束のための唄はそれでも、今年の日本の塞いだ空気を何かしらサルベージしたのではないか、とも。別れとまた出会えるかもしれない約束へのぼんやりとした想い、儚くも強い願望をオーセンティックなバラッドにのせて届けることで、変わった重力はあったと信じる。〈遠くでともる未来 もしも僕らが離れても それぞれ歩いていく その先で また 出会えると信じて〉というフレーズさえも世代を越えてくる訴求性があるというのは、逆説的に険しい現実になってしまったのかもしれないが。
(2014.10.13) (レビュアー:松浦 達(まつうら さとる))
 


   
         
 


 
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