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言葉遊びが展開されているようなリリックビデオで、でもこの言葉遊びは遊びの領域を遥かに超え、言葉のちょっとした違いで変わってくるニュアンスの溝のようなものをえぐり出している。僕らの暮らしは人との関係によって成立していて、その関係を支えているのは言葉によるコミュニケーション。その言葉を僕らは存外に乱雑に扱っていて、だからその言葉のちょっとした遣い間違いによって生まれる溝が、良好だった関係にも見事に溝を生み、別れに至るのだと思う。そんなことを考えながらこのビデオを見ていた。見ていたというより、読んでいた。感情が行き違う相手との間にあるのは、行き違う感情ではなくて行き違う言葉だと改めて思う。人は知識を得ていく過程でどんどん勝手に覚えてしまう。だから正しく覚えたはずの自分が勝手に間違いを覚えた他人との間に言葉の齟齬を生む。いや、間違えているのは自分なのだろうか。自分の誤りのせいで誰かを不快にさせているのだろうか。だとしたら謝りたい。一体誰に?誰に謝ればいいのだ?そんなことも皆目検討つかず、ビデオ最後のシーンで誰かと誰かが手をつなぎ合うという結末が映され、どういうわけか救われた気分になった。
(2014.9.11)
(レビュアー:大島栄二)
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