Moreno Veloso『Coisa Boa』 Next Plus Songモケーレムベンベ『ふらふら道中』

Inside of the door
『11月』

 歌詞に具体性のない表現が連なっている場合、普遍性は高いので多くの人に共感してもらえいる可能性は出てくるが、一方で具体的でない分、イメージが形になりにくく、共感にまで至らない可能性も高くなる。相反する効果につながるのだとしたら、じゃあどうすればいいのかと問われるけれど、この曲はひとつの答えになっているのではないかと思うのだ。「同じさ、同じさ」「分かったよ、僕にもさ」「寂しくないよ、ひとりじゃないよ」「もうすぐ朝が来るのさ」という言葉が繰り返されている。よく考えれば恋愛相談などをされた時、具体的なアドバイスなどを求められているのではなくて、悩んでいるその人をひたすら肯定してあげることがベストな対応だったりするわけで、歌詞というのもそういうものでいいのかもしれない。無論そういう肯定を信じられる所以はそれまでに築かれた信頼関係なのであって、ただ文章を並べたところで説得力は出てこないのだけれども、そこは、歌だから。盛上がるメロディをバックにこの肯定力ある言葉が並ぶことで、インパクトがどんどん増している。たいして具体的なことは何ひとつ言ってないのに、1曲終わる時にはなにか勇気づけられてしまっている。いやあ、歌って本当にイイですねって、在りし日の水野晴郎の口調で締めくくってしまいたくなる1曲だ。いや、本当に良い意味で。
(2014.8.18) (レビュアー:大島栄二)
 


   
         
 


 
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