原曲の骨組みだけを残し、アンコールはせず、曲の中に多くの意味を込め、惜しくも2010年3月に解散してしまったゆらゆら帝国というバンドは、後期になるほどにライヴにおけるインプロヴィゼーション、ジャム・セッションの余白が凄まじくなっていた。たとえば、「ミーのカー」という曲を30分ほどやる中での陶酔。近年で、似て非なる体験をしたのはOGRE YOU ASSHOLEのライヴだった。グレイトフル・デッド、フィッシュなどサイケデリックなグルーヴでオーディエンスを魅了するアクトは過去から尽きないが、彼らの場合はどこか醒めた感覚とともに、じわじわと音像の反復/差異の囲いを跨いでゆく。この「Rope」も2011年のオリジナル・ヴァージョンをプログレッシヴにリ・アレンジメントし、聴き手を陶然たる境地まで運ぶ。幾重ものノイズが細やかなテクスチャーを織りあげる中では、ただでさえ、大気汚染などでぼやけがちな視界を生々しく引き裂くようで、カオティックに分散するサウンドと対比して、「纏めてゆく」というリリックが反語的に突き刺さる。素面でも、フリーキーな夢に酔える証左だろう。