AZUMA HITOMI『破壊者アート』
しげるドロップ『遊泳禁止』
小沢健二
『夢が夢なら』
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小沢健二、というアーティストを巡っては難渋な自/他鏡像性を帯びる。こちらが「こう、想っているだろう」ことを先読みして、不思議なエゴ・オリエンテッドなブービートラップを仕掛けたりする。90年代という幸せな瀬に彼は『LIFE』というダイレクトに、幾多のオマージュに溢れた晴れやかなアルバムとともに、躁的にポップ・スターとしての宿命を背負った。そして、ジャズ、ニューウェーヴへの傾ぎ、寡作化、海外への移住、すこしずつ忘れ去られるどころか、彼が「聖痕」として刻んだ音の端々が多少の規律とともに、このたび、ボックス・セット梱包内の2010年の『ひふみよ』ツアー時のライヴ音源の三枚組が安価でリリースされた。『我ら、時』には往年のヒット曲と新曲、朗読詩が混在しながらも、これまでではありえない「夢が夢なら」から「麝香」といった流れもある。少しだけ歌われる哀悼めいた「ある光」、指揮者のように彼がオーディエンスを捌き、煽るタイミング。“オザケン”と略するには抵抗がある方には距離は出てしまうだろうし、ここでの「いちごが染まる」、「シッカショ節」、「時間軸を曲げて」という新曲群も取り留めがない。しかし、取り留めのなさが小沢健二たる“知性”の軸なのではないだろうか。このmusiplでは、京都を巡るMVとともに、ライヴでも原曲に忠実に歌われたジャジーでリリカルなこの曲をあえて。
(2014.3.20)
(レビュアー:松浦 達(まつうら さとる))
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