神谷成基『何にもないです。』 Next Plus Song宇宙人『ものすごい関係』
スピッツ
『日曜日』
 日曜日は平等に誰でもあるが、その日曜日の費消の仕方はそれぞれである。買い物、飲み食い、無為、なんでもいい。ただ、幻想に浮かぶ日曜日も音楽は用意してくれる。「弱い犬ほどよく吠え」ながら、日本でも桁違いのセールスをあげて、前線に立つようで様子見をしているバンド。「ロビンソン」で築き上げた二人だけの妄想の国はポップ・ミュージックが希求し得るべき最大公約数だったとしたら、「空も飛べるはず」、「チェリー」や「スターゲイザー」における国民的な彼らへの所望との誤差分だけ、スピッツの弧高を際立たせてもいた。90年代のJ-POP文法というものが確立してもいなくても、メイン・ソングライターの草野マサムネは正坐してエレファントカシマシを聴き、たとえば、ライヴ・ハウス、渋谷ラ・ママやロフトへの愛敬を絶やさず、近年まで単独でのアリーナ・ツアーを解禁しなかった矜持には注視すべきだろう。パンク精神に文学性を掻き混ぜ、ビートニクスに無為を唄っていた彼らは久し振りの新作『小さな生き物』を経て、少しずつ、ほんの少しずつだが、モードが変わってきている。ただ、ここで取り上げたいのは彼らがリリース当時はダダ、シュールレアリスモ沿いに積極的生産性を頑なに拒否していた休日のためのものである。『名前をつけてやる』という好戦的なアルバム名が示していた平和時のとおり。しかし、今、リ・アレンジメントされてライヴで再写される幻惑的で聴取者の妄想を戦車で轢くような歌詞が爆ぜ合うこの曲は、軽やかで隙がない。
(2014.2.9) (レビュアー:松浦 達(まつうら さとる))
 


   
         
 


 
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