本棚のモヨコ『僕らのメモリーズ』 Next Plus SongHAPPLE『サーカス』
シャムキャッツ
『MODELS』
 俯瞰的な描写に電子タブレットに歌詞が流れる高速道路。東京を中心に、着実な人気を集めている四人組ロック・バンド。この曲ではシティー・ポップスの流線形の上にダヴィーな加工を加え、リリックには怜悧な第三者の視点を加え、スティーリー・ダンでも先ごろ惜しくも亡くなった大瀧詠一でもない新しい“ロング・ヴァケーション”ではなく、“ロング・シーズン”を描いている。そういう意味では、森は生きているといったバンドと同質のエントロピーを持ちながら、冷ややかさを持っているのかもしれない。こういった若い群像描写には筆者にはつい、大江健三郎の『われらの時代』の“アン・ラッキー・ヤング・メン”の影も見てしまうが、おそらく、シャムキャッツは彼や、彼女の描写を巧みに、そして、記号論的に「タモリがはしゃぎ下らなく午後が始まる頃」なんてフレーズからして、刹那を弁えているところが頼もしくもある。このままの速度で、引き延ばされたような日常の地続きの音楽を奏でて欲しいと思う。われら、から、きみたちの時代への架橋を渡るべく。
(2014.1.22) (レビュアー:松浦 達(まつうら さとる))
 


   
         
 


 
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