“大人のための子守唄”みたく、ゆったりしたテンポとメロディー、ソフト・ロック的なアレンジメント、カンタベリー・シーンを思わせるサウンドにまず掴まれる。「うたもの」がより浸透することになる契機のひとつ、00年のコンピレーション『So Far Songs』内で、渚にて、山本精一などと並び、ラブクライも流石の存在感を示していたが、その中心人物の三沢洋紀の独特の柔らかな声が、曽我部恵一、HARCO、青山陽一などの持つたおやかさも彷彿とさせながらも、MVによぎる、ささやかな真夜中の情景に静謐を閉じ込める。なお、アルバム『サイレントのとんがり』にはダウン・トゥ・アースなカントリー、淡々とした打ち込みにピアノやホーンが絡む曲まで、どれもシンプルな意匠ながら、サウンド・センスは熟練し、三沢のソングライティング能力もこれまで数々のプロジェクトで立証されてきたとおり、冴えている。これくらいの、淡く微睡むポップスに揺れてみるのもたまにはいい気がする。