しかし、2018年の『ボヘミアン・ラプソディー』。およそ43年前に『A Night Of The Opera』で、邦題で『オペラ座の夜』でリリースされたアルバムの中の一曲。2分、3分台の軽快な曲が並ぶ中での6分の「Bohemian Rhapsody」。 今でこそ先鋭的なロック・バンドはオペラをオルタナティヴに用い、伝えようとするメッセージ性も明瞭になっているが、この曲ではダイレクトな贖罪意識とフレディ自身の心情が濃厚に吐露されている。表現者としての自我、自我が表現形式を変えることはよくある。レディオヘッド「パラノイド・アンドロイド」、カニエ・ウェスト『ザ・ライフ・オブ・パブロ』、更には劇中にも出てくるピンク・フロイド『ザ・ダークサイド・オブ・ザ・ムーン』のように。商業作品的には破綻していても、アートの領域では高尚なまでにエネルギーを帯び、飲み込もうとすると体力が要る。