絶望ルーシーは立ち止まらない

            〜新譜リリース直後の「活動休止」宣言、その真意とは〜 文=大島栄二

 2015年3月1日、絶望ルーシー3枚目のCD『スプリング・ブルース』がリリースされる。高校生バンドとして活動、注目を集めてきた彼らにとって卒業式の日のリリース。そして翌日のレコ発ライブ。絶賛の嵐を浴びたほぼ1週間後、彼らはTwitter上で活動休止を宣言する。

 何故なのか。まさにこれからというタイミングでの活動休止宣言。ネット上で彼らの今後を心配する声も多々聞こえてくる。そこでmusiplでは発売されたばかりの新作についてと、彼らの活動休止宣言の真意を探るべくインタビューを試みた。



新作『スプリング・ブルース』

m:まずは新作リリースおめでとうございます。レンヤくんにとって『スプリングブルース』の制作意図は?

七曲レンヤ(以下「レンヤ」):今のライブでの空気感を詰め込もうということでした。綺麗な感じに作ろうというのではなく、空気をレコードに収めようという目標で作りました。

m:出来上がったものについて自身ではどう手応えを感じてますか。

レンヤ:意図したものは出来たと思ってます。でも全然満足はしてないですね。2枚目が音的にすごく良かったなというのがあって。絶望ルーシーはこういうのも出来るんだぞという感じのアルバムには今回なったと思うんですけど、出来上がってすぐに次の課題というのが見えてきたし。全然満足はしていないですね。次に向けてのステップアップの過程ということです。

m:高校の卒業式にあわせてのリリースでしたが、高校の卒業というのはどういう意味合いがありましたか。

レンヤ:ずっと制服でライブをしとって、もう高校生と言われんくなるぞという、なんすかね、今から終わるというのではなくてこれから始めるぞという決意。

m:それは実際の学校ということではなくて、自分の中の何かからの卒業みたいな意味合いがあったんですか。

レンヤ:学校も含めて、一旦全部終わったという気持ちです。

m:これまでは全部制服でやってきたことのこだわりというのは?

レンヤ:部活が一時期軽音みたいなのに入っとったんですけど、音がデカイというだけでみんなに嫌われとって。そこに入っとっただけで怒られたりというのもあって酷かったんで。じゃあその制服で有名になってやろうということで着てました。

m:卒業するとそれはもう脱ぎ捨てると?

レンヤ:卒業したのに着てたら、コスプレになっちゃいますもんね。



「活動休止宣言」の真意は?

m:今回Twitterで活動休止宣言というのが出たんだけれども、その理由というのはメンバーの脱退?

レンヤ:それもあるんですけれど、次にちゃんとしっかり立て直してメチャメチャかっこいいライブをするためには時間が要るなあと思っとったので。メンバー抜けがなかっても休止はしてたと思います。

m:メンバーは具体的には?

レンヤ:ドラムが抜けました。音楽活動に対する熱量の違いというか、どれだけ変えたいと思っているかの。その差があったという感じです、別に音楽の内容自体の問題ではなくて。プレイとか内容的にはこのまま一緒にやっていきたいと思っとったんですけど、やっぱり音楽にかける熱量が違ってて、そのせいでやり辛いというのがあったので。やっぱり上を目指しとる分、そういうのが出てきたのかなと。

m:今の段階で目指している上っていうのはどういうこと?

レンヤ:現時点でもそれなりに大きなイベントに誘われたりというのはあるんですけど、その程度で喜んではいられないという状態です。



活動再開の青写真はもう出来ている

m:今後の展望として、Twitterでも、夏頃にはなんとかという話があったと思うんですけれど、それに対する見通しというのは?ファンの皆さんもまったくどうなるのかわからないというのでは不安だろうし。なんらかのアナウンスメントとしてレンヤくんが現時点でどう思っているのかということを教えてもらえれば。

レンヤ:なんといえばいいんですかね。形も、コレからどうなるのかということも決まっとるし、曲も作っとるし。これをどれだけ完璧でカッコいい形で出せるかというための休みなんで。またすぐ戻ってきますということですね。

m:メンバーが抜けたドラムについては?

レンヤ:もうサポートで入ってもらうことで決まっています。

m:じゃあメンバーが決まらないのでズルズルといつまでもということはないんだ。

レンヤ:ないですね。目標も決めてて。広島でエイトシックスというイベントが8月6日にあって。僕らは昨年もそれに出たんですけど、8月6日じゃなくて7日だったんです。6日には10FEETとかハスキングビーとか横山さんとかが出たイベントで。それのオープニングアクトに出ようという目標を決めてます。勝手な目標としては8月6日復活ということで。

m:もしそのオープニングアクトに選ばれなかったとしたらどうするの?

レンヤ:選ばれなかったということを全然考えてないので。これまでもそういうのにエントリーする時にはメンバーに「応募するから」ではなくて「○月○日にライブあるから予定空けとけよ」と言ってやってきたんで。生意気な話ですけど。

m:じゃあ活動休止という言葉が持っているようなネガティブな話ではないんだ。

レンヤ:そうではないですね。もっともっとすごい景色を見ようよっていう、そのための充電というか準備期間ですね。

m:それを聞くとみんな安心しますね。ネット上に「活動休止」って文字が出てくると、高校卒業して生活も変わるからいろんなことが出来なくなるのかなと思っちゃいますからね。

レンヤ:そういうことではないので。アルバムも作ろうということも話しているので、期待してもらっていいです。コンセプトなんかも徐々に決まってきています。

m:ライブはこれまで高校生活もあったので広島限定という感じだったと思うんだけれど、これは変わっていくのかな?

レンヤ:これからも広島のバンドですと言い続けていきたいし、広島を基盤にしてやっていくんだけれども、機動力は上がっていくと思います。これまでもいろいろなところから呼ばれてて、大阪とか仙台とか福岡とか、いろいろなバンドマンや、CDを買ってくれた人たちが「来てくれよ」と言ってくれてて、なかなか行けなかったんですけど、これからは行けるようになると思います。

m:最後にファンの皆さんにメッセージを。

レンヤ:メッセージですか。難しいですね。いつもやってきたステージや歌がメッセージだったので、ただ「すぐ戻ってきます」ということですかね。これまでライブを生で見てくれてきた人たちは解ってくれていると思いますけれど。

m:安心しとけと。

レンヤ:そうですね。自分自身はこれからどうなっていくのかとかうっすら見えているし、目標もハッキリしているんで、この安心感をどう伝えていけるのかということなんですね。メチャメチャカッコよくなっていきますから。

m:そこは、「もしカッコよくならなかったらどうしよう」とは考えないんですよね(笑)。

レンヤ:そうですね(笑)。めちゃくちゃヤバいバンドになっていきますよ。




 結論として、絶望ルーシーはまったく止まってはいなかった。活動休止宣言といってもそれは表面上動きが見えなくなるだけで、次の雄飛の助走をするようなもののようだ。ボーカルの七曲レンヤ自身は弾き語りでのライブという形でもコンスタントに露出を続ける予定。新しいアルバムを出しながらも既に次を見据えている彼ら。その姿が再び表舞台に出てくるまで、長く待たされることにはならなそうだ。最新アルバム『スプリング・ブルース』を聴きながら、その日を楽しみに待っていればいいのではないだろうか。

 

絶望ルーシー『狂気のサタデイ』

 

   
         
 

2015.3.25.寄稿